ドキドキの入学
アフロとオールバックで参戦

- 髙松勇磨
(以下、髙松) - 地方から上京してフリーで芸人をやっていたのですが、なかなかうまくいかず…。30歳になって「このままだと人生が終わるかもな」と思いました。そこで「これでダメやったらお笑いを辞めよう」と、そのとき何もしていなかった静を誘って養成所に入ろうと思ったんです。
- 静
- 当時、僕はフリーター状態だったので、誘われたときはめっちゃうれしかったです。「芸人になろう」と思って東京に出てきたのに、何をすればいいのか分からない。賞レースの予選には出るけど、それ以外の活動はせず、29歳まで働いては遊んで…を繰り返していました。
- 髙松
- OECを選んだ理由は、講師をされているヤマザキモータースさんのライブに出ていたからです。「ヤマザキさんがいらっしゃるなら行ってみよう」と思って選びました。
- 静
- 入学前「面白い人たちがいっぱいおるんやろうな。ここでぶちかまそう」と思って、OECに入る1週間前にアフロにしました。
- 髙松
- 相談もなしにな(笑)。僕も『ブレイキングダウン』みたいな感情になってオールバックで行ったんですけど、周りは普通の格好をした人たちばかり。めちゃくちゃ恥ずかしかったです。
- 静
- 次の週にはオールバックをやめて、おかっぱになっていました(笑)。
成長に直結した
講師のアドバイス
- 髙松
- OECに入る前は、めちゃくちゃ厳しいところだと思っていたんですよ。でも、全然違いました。もちろん厳しさもあるのですが、それよりも「楽しんで面白いものを作っていこうよ」みたいな授業が多かった印象です。だから、怖さというよりは楽しかった思い出が多いですね。
- 静
- 授業では学ぶことも多かったですね。僕はOECに入るまで、ネタ見せを受けたことがなかったんです。授業では講師が納得のいくアドバイスをくださるので、尖って受け流さず、全部聞いたほうがいいなと思いました。
- 髙松
- 僕は特に子どものときからテレビで見ていたユウキロックさんに「面白いと言われたい」と思ってネタを作っていました。いまもネタを見ていただいているので、本当にありがたいです。
- 静
- 僕が覚えているのは、ヤマザキさんに初めてネタ見せをした授業。髙松が「お前経験者やからちょっと強めに言うぞ」と言われていたのですが、僕的には「俺はほぼ素人なんやけどな」って。
- 髙松
- お前せこいぞ。自分だけ助かろうとするなよ!
- 静
- (笑)。OECの1年間はあっという間でした。若い年代の子たちと授業終わりにごはんを食べに行くのも楽しかったし、やっぱり同期が辞めていくのは切ないです。もちろん、まだがんばっている子もいるので、一緒にがんばれる仲間がいるのはいいなと思います。
- 髙松
- あらためてOECに行ってよかったなと思います。講師からのアドバイスは「確かにそうやな」と納得することが多くて愛情を感じましたし、養成所のうちからライブに出られて経験を積めたのも大きい。そのおかげで成長できたなと思いますね。
OEC卒業後は
どんな活動をしている?

- 髙松
- 現在僕たちは3年目。OECを卒業して思ったのは「自分たちで自分たちを管理しなきゃいけない」ということですね。OECがあったときは、“必ず行く場所”が用意されているけど、卒業した後はサボろうと思えば、いくらでもサボれちゃうんですよ。
- 静
- ライブに出ていないと、マジでフリーターと何も変わらなくなっちゃう。僕は欠けている部分が多いので、卒業したとき、髙松から「もうプロになったんやけん、いままで通りにしてたらヤバいよ」と言われてふんどしを締め直しました。多分、いま人生のなかで一番がんばっていると思います。
- 髙松
- 僕らは月に20本前後のライブに出ています。夜にライブがある日は、午前中に静と集まって、ネタ合わせをしたり、新しいネタを作ったりして本番に備えています。ネタづくりは、設定のメモをもとに静としゃべり、自分のなかで組み立てて、静が「いいね」と言ったものをやります。案が最初にあるとしたら、4、5時間で作って、どんどんライブにかけていくイメージですね。前までは一本まるごと僕が考えていたんですけど、そうすると静がセリフを覚えられないんですよ。だから一緒に話して、静の言葉で作っています。
- 静
- それでも覚えられないですけど(笑)。
- 髙松
- やっぱりライブに出ると学ぶことも多いんです。最初はボケの静をメインで考えていたけど、自分を出してウケることもある。静を立たせつつ、自分もやらんといかんなと思えたのはライブのおかげですね。お笑い以外の日はバイト三昧で、当然休みはなし。お笑いかバイトをしている毎日です。
- 静
- お笑いをしていない日は朝まで働いて、時間があったらスキマバイト用アプリで仕事を入れて…それでギリギリ生活できるレベルです。しかも僕たち年齢がいってるから、同級生と遊ぼうにも生活水準が違いすぎて、いまのバイト代じゃ無理なんですよ。
- 髙松
- 本当にそうやな。俺の弟、家買ったんやけど…(笑)。ちなみに、バイトは天ぷら屋で、週に3日ほど働いています。融通が利くバイト先なので、「1日入れてほしい」と言ったら終日入れてくれることもあります。
- 静
- 僕はフリーターのときからずっとバーで働いています。僕のところも融通が利くのでありがたいですね。
- 髙松
- バイト選びは重要だと思うんですよね。僕はバイト先の社長が父親の知り合いだったので、融通が利きやすい。迷惑はかけますが、突発的にライブが入っても、職場の人たちが「行ってきな」と応援してくれます。もちろんこんなバイト先は珍しいと思うので、どうしても見つからない人は、個人でできるフードデリバリーでいいと思います。僕の最初の目標としては、まずバイトを辞めたい。バイトなしで生活できるようになったらデカいな。
- 静
- 「本当のプロ」って感じするよな。皿洗いしよるとき「俺、東京に何しに来たっちゃろ?」って思いますもん。
テレビ初出演で露呈した
圧倒的経験不足
- 髙松
- 思い出に残っている仕事と言えば、OECを卒業してすぐに出させてもらった『ウチのガヤがすみません!』です。編集で面白くしていただきましたが、僕ら的にはテレビ初仕事で「なんもやっとらんやん。俺らヤバいやん」と反省した思い出しかない。
- 静
- 家に帰るまでの記憶がないです。「俺らは何をしよったんや」って。
- 髙松
- 圧倒的に経験と力が足りてないと思いましたし、日々のライブでも、もっと反応していかんとマズいなと思いました。「それ地毛?」って聞かれて静はなんて答えたんやっけ?
- 静
- 「はい!」って…。
- 髙松
- ヤバすぎる。何か言えよ(笑)。「いまならこう言えるのに」とかあるんですけどね。
- 静
- 当時からの課題ではあるのですが、僕は自分がまだ何者なのか全然分かってないんですよ。誰かに教えてもらうというよりは、自分で探し続けるしかない。雲をつかむような感覚ですね。
- 髙松
- 確かに昔から課題は多いですね。いまの課題で言うと、僕は毎月ネタを作るのが壁です。「いいシステム漫才ができた」と思っても、うまく伝わらないこともある。多分最高の1本を作れば変わるはずなんです。これからも、いいネタを探し続けるんだろうなと思います。
- 静
- あと、僕はめっちゃ自分に弱いんで、心が折れそうになる瞬間が何度もあります。いきなり「こんなんいつ売れるん!」と感情的になることがあるんですけど、そのときは髙松とケンカして、踏みとどまれています。
- 髙松
- 僕は逆に心が折れることがないんですよ。たとえ辞めたいと思ったとしても「いやいや、とことんやってないやろ」と自問自答する感覚で続けています。もちろんしんどいときもあるんですけど、それ以上に笑っている時間が多い。「しんどい」よりも「面白い」や「楽しい」が勝っているんですよね。
OECなら
才能を見つけてくれる…かも

- 髙松
- OEC入学前にやっておいたほうが良かったなと思うのは、「メモをとる癖をつけること」ですね。考えたこととか出来事とか、絶対に忘れちゃうし、メモをしておくことで、忘れずに済み、トークやネタに生きる。些細なことでもメモはとったほうがいいと思います。
- 静
- あと、質問があったらみんなの前だろうがなんだろうが恥ずかしがらず、全部講師に聞いたほうがいいですね。僕、年齢が高かった分、変に聞かなかった時期があったんですけど、すごく後悔しているんですよ。「俺は面白いんだ」というプライドはもっていいと思うんですけど、余計なプライドはいらないと思います。
- 髙松
- そうやな。変なプライドがないヤツのほうが伸びるやろうな。
- 静
- あとは負けず嫌いね。
- 髙松
- 辞めようと思えばいつでも辞められるので、OECに入ろうか迷っている人は、一旦入ってみてもいいと思います。OECに入ることは恥ずかしいことではない。どのみち売れてないと恥ずかしいんだから! 僕も30歳で入ったので、年齢が高くても大丈夫です。
- 静
- 「芸人になりたい!」と思っているなら絶対に入るべきです。フリーでやっていても、フリーターと変わらないし、僕みたいにサボれるし、よっぽどの才能がないと絶対に売れない。でも、OECだと自分でも気づいていなかった才能を見つけてくれるかもしれません。なので、絶対に入ったほうがいいと僕は思いますね。
せからし会…福岡県出身の静(ボケ・左)と高松(ツッコミ)による漫才コンビ。同郷の先輩・後輩としてコンビを結成し、上京後はフリーで活動。その後、太田プロエンターテインメントカレッジ(OEC)へ入学し、卒業後に太田プロダクションへ所属。静のアフロヘアと髭、高松のおかっぱヘアという強烈なキャラクターを武器に、卒業直後には日本テレビ「ウチのガヤがすみません!」へヒゲものまねで出演。養成所で培った個性を武器に、若手注目コンビとして活躍の場を広げている。
